ひとくちに「クリエイター」といっても、描き出すクリエイションは色とりどり。その背景には、バッググラウンドや譲れないこだわり、そして個性がある。
私たちが愛する「あのイラスト」は、いったいどのような思考回路をたどり、どのような技術によって生み出されているのだろうか。
クリエイターたちが歩んできた人生に焦点を当て、自分好みの色でクリエイター人生を彩ってきたヒストリーを明らかにしていく連載「人生のふであと」。
今回のゲストは、会社員とイラストレーターの“二足の草鞋”を履くせの弁当屋さんです。
せの弁当屋さんの担当編集者に話を聞くと、「彼女は彼女にしか説明できない、壮大な世界観を持っている」とタレコミがありました。人気アーティストのMV制作も手がけるせの弁当屋さんの脳内は、いったいどのようになっているのでしょうか。
イラストレーターであり、会社員でもある異色のクリエイター・せの弁当屋さんの“ふであと”をたどっていきます。
ただの趣味に、熱が宿った
──── せの弁当屋さんが、イラストを描き始めたきっかけについて教えてください。
絵を描く楽しさに目覚めたのは、高校時代に所属していた美術部のときです。もともと絵を描くのが好きで美術部に入部したのですが、絵を描くことに向き合う時間が増えたことで、「ただの趣味」に熱が入るようになりました。
当時から「自分の絵を見て気持ちが明るくなってくれたら嬉しいな」という思いがあり、それがイラストレーターとして活動する現在につながっています。
──── 当時からイラストレーターを目指していたのでしょうか。
いえ、もともとはプロダクトデザイナーを志していました。親がプロダクトデザイナーだったので、影響を受けていたのだと思います。
絵を描くことはあくまで趣味であり、職業としては考えていなかったんです。
──── いったいどのようなきっかけで、イラストレーターとしてのキャリアを歩むようになったのでしょうか。
きっかけは、コロナ禍です。
大学4年間のうち3年間がコロナ禍で、ほとんど家から出る機会がなく、学生生活のほとんどを趣味のイラスト制作に充てていました。すると、イラストへの熱がどんどん高まっていき、次第に「仕事にしたい」と思うようになったんです。

ただ、当時の私にとって、イラスト制作はあくまで趣味です。ご飯が食べていけるイメージは持てていませんでしたし、自信があったわけでもありません。
でも、いざ就活を迎えたタイミングで自分に向き合ってみると、昔から興味のあったプロダクトデザインや、大学時代に興味を持ったサービスデザインを仕事にするよりも、イラストを描くことで生きていきたい気持ちがずっと強いことに気が付きました。
やはり、自分の気持ちにウソはつけなかったのです。
現在はシステムエンジニアとイラストレーターの“二足の草鞋”を履いていますが、これはイラストレーターとして生きていく未来を見据えて選んだキャリアです。
すぐにイラストレーターとして活躍できる自信はなかったので、理想と現実のバランスを取るべく、時間の融通が利く職としてこの仕事を選びました。
丸々“メタっちゃった”夏休み
──── イラストレーターとしては、どのような活動をされているのでしょうか。
Vtuberさんをはじめとする、個人の方からいただくお仕事が大半です。
細々としたアイテムが散りばめられ、カラフルで、可愛いけれどそれだけじゃない……というのが私のイラストの特徴なのですが、基本的にはそのテイストで依頼をいただけています。
説明するのが難しいのですが、私が描いている絵は、「GOSPLAD」という架空世界の住人たちです。絵を真剣に描き始めてからずっと持っているコンセプトで、日々SNSにアップしているキャラクターも、食べ物も、すべてGOSPLADに存在しています。
なに言っているのか分からないですよね(笑)。ただ、私が楽しく絵を描くにはGOSPLADが必要で、できることならみなさんにもGOSPLADの世界観を楽しんでいただきたいので、興味を持っていただけた方はSNSアカウントをフォローしてもらえたら嬉しいです。

兎にも角にも、描きたい絵を書かせていただき、本当にありがたいなと思っています。
法人がクライアントになるお仕事は、基本的にR11Rさん経由です。こちらは個人でいただく仕事とは毛色が違って、MVのイラスト制作といった大掛かりなものも少なくありません。
──── R11Rとの仕事内容で、印象に残っている案件を教えてください。
いぎなり東北産さんのシングル『メタハンマー』のMV制作です。
仕事が決まったときは、嬉しさと同時に、是が非でもやってやろうと思いましたね。個人で活動していたら出会えないような案件だったので、絶対にいい結果を残したかったんです。
当時は大学生で、夏休みを丸々使ってイラストを描きました。曲を聴き込み、世界観を理解して、そのうえで自分の色を出す工程は複雑で、現在につながるたくさんの学びがあったと思います。
自分の限界を越える機会をいただいたR11Rさんには、とても感謝しています。現在は企業案件も増えてきているので、これからもたくさんの仕事をご一緒できたら嬉しいです。
描きたくても、描けない日がある
──── 会社員とイラストレーターの二足の草鞋を履くうえで、大変なことはありますか。
制作活動に専念できないので、最近は依頼があっても断らざるを得ない案件があり、非常に心苦しい気持ちです。
退勤後の時間はイラストレータとしての活動に充てていますが、疲れて机に向かう余裕がない日もあります。とはいえ、創作できない日々は、それはそれで調子が悪くなるので大変です。

自分にもっとスキルがあれば、きっと創作だけで食べていけるのでしょうが、なかなかそうはいきません。
今は本業を頑張りつつ、休日や隙間時間をを利用してスキルアップをしている最中です。いつか、本業の収入をイラストレーターの収入で追い越して、独立したいと思っています。
──── イラストレーターを本業にするには、どのような課題があると考えていますか。
やはり、まだまだ知名度が足りないと思います。
もっと自分のことを知ってもらえれば、手がけられる仕事の幅が広がりますし、仕事の幅が広がることで、スキルも高まっていくはず。
知名度と技術力は鶏と卵の関係性だとも思いますが、日々の発信活動や、日常的な創作活動にも力を入れていきたいです。
自分の物語を、みんなの物語に
──── せの弁当屋さんの、今後の目標について教えてください。
繰り返しになってしまいますが、いちばんの目標は、イラストレーターとして独立することです。
いろいろと考えた結果、唯一諦められなかったのが、大好きな絵で生きていく道でした。まだ先は遠いような気もしますが、イラストレーターとして生きていくために現在のスタイルを選んだので、過去の自分を裏切らないためにも頑張り続けたいと思っています。
そのうえで、楽しみながら創作することも忘れないようにしたいです。
そもそも絵を描き始めたのは、創作する時間が楽しかったからです。独立するのが目標ですが、独立するために絵を描いているわけではないので、自分の世界を追求することも続けていければと思っています。

その意味で、GOSPLADの世界観を、もっと分かりやすく届けることもしていきたいです。以前は「自分のなかにある物語だから」と蓋をしていましたが、もし世界観を共有できたら、創作を楽しみながら仕事につなげていけるかもしれません。
最近だと、4コマ漫画やアニメーションを制作するなど、GOSPLADに興味を持ってもらえるような活動を始めています。ただ、ほんの一部であって、まだまだ詳細を説明しきれていません。
これからどんどん、みなさんの脳内にGOSPLADを浸透させていきますので(笑)、楽しみにしていてくださいね!